夢を売る人〜言葉が命を救うとき〜
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「夢を売る人」〜言葉が命を救うとき〜
屋上に立った男は、
すべてを終わらせるために、そこにいた。
だが、彼の隣に現れたのは、
“止める者”ではなく、“共にいる者”だった。
飛び降りようとする男に、謎の男は言った。
「気にするな。朝食を食べに来ただけだよ。
君が飛ぶのを、ただ見届けようと思ってね。」
その言葉に怒るどころか、男の心は“静かにざわついた”。
なぜこの男は、こんなにも冷静で、
こんなにも妙なあたたかさを纏っているのか。
男は写真を取り出す。
それは、もう会えない息子の写真。
彼の心を縛っていたのは、「悲しみ」ではなかった。
それは、深い——罪悪感だった。
謎の男は、声を荒げることも、否定することもせず、
ただこう言った。
「君の死は、誰かの命を少しずつ削ってしまう。
自殺とは、静かな殺人なんだ。
君を愛したすべての人の心を、君が知らぬうちに奪ってしまう。」
男は、揺れた。
死ぬことへの覚悟よりも、
生きることへの問いが、胸に響いた。
そして謎の男は、決して「やめろ」とは言わなかった。
「私は君を止めに来たんじゃない。
ただ、“考える時間”を届けに来ただけだ。
飛ぶ勇気があるなら、きっと、生きる勇気もある。」
彼の正体は、心理学者でも神父でもなかった。
夢を売る、トップセールスマンだった。
今日の格言
「人の心は、正しさでは動かない。
静かに隣に“いる”ということが、
絶望の闇に差し込む最初の光になる。」
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RMA戦略家
岩根央